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2023年に発見したこと。

あけましておめでとうございます。2024年の幕開けです。天変地異、痛ましいニュースや事故。これから1年を思い描く時に、ぐっと神妙かつ真剣な想いを引き起こす年明けになりました。助け支え合って、一歩一歩、進んでいきたいと思います。


私は、代表藤田進と申します。年始にあたり、私の2023年の発見を少し振り返りつつ、自己紹介をさせていただければと思います。私は、札幌を中心に、保育現場へ絵本や玩具の紹介や保育環境の提案をさせていただく傍ら、保育研修の企画運営、書籍の出版や編集、月刊新聞(庭しんぶん)の発行をしている40代3児の父親です。


まずはじめに、2023年度の保育研修を受講してくださっているみなさま、旧年中は大変おせわになりました。2023年度の配信期間(3月末)も残りわずかとなってきました。年末年始一息ついて、年度末に向けて、こどもとの生活が始まります。お忙しいとは思いますが、次年度の準備、また、今年度の振り返りに、引き続き弊社の研修をご活用いただければ幸いです。また、いただいたアンケートなどを踏まえ、2023年の学びを土台に、来年度の配信内容をまとめているところです。今月中にお知らせできる予定です。引き続き、次年度もご活用いただけましたら幸いです。どうぞ、よろしくお願いいたします。




この写真は数年前の3月の写真です。雪国ならではの風景ですが、春に近づき、だいぶ暖かくなって雪がスコップで切り出せるような硬さになっていました。そこで、スコップで雪を切り出して、イグルーのように壁を積み上げました。雪は融通無碍の天然素材で、天候や時期によって、感触も遊び方も変わります。地域によっても雪の質や量も違いますし、年によってもだいぶ様子が違います。自分たちの日々の生活の中で、この時期にはいつも目の前にある素材です。いまの札幌は、先日は雨。今日は雪。まだまだ、雪は少ないですが、庭では、こどもたちが雪をかき集めて小さなかまくら(秘密基地)をつくっています。


2023年の発見①  教育的価値と問い

この季節になるといつもそこにある雪ですが、すこし視点を変えると、とても優れた教育的な素材でもあります。日々表情が変わる雪質、協働して雪を集めたり、形作ったりする中に、さまざまな学びがあります。私も雪から学んだことはたっぷりあります。子どもと日々過ごす保育者にとって、意識的にも、無意識的にも生活の中にある、ありとあらゆるものの中に「教育的価値」を見ているように思うのです。「目の前のこどもにとって、いまこれはどういう教育的な価値があるのか?」という問いを日々しているのかもしれない。自然環境や地域資源、身近な出来事やニュースなど、乳幼児教育では、彼らの周りにある生活環境がそのまま教育に結びついていきます。私は、2023年のあそびの庭保育研修講座1『「環境を通して行う教育」を基礎から学ぶ』で、そこにある意味や価値をとても深く学ぶことができました。室内外の環境構成や日課、玩具や絵本の選定、言葉がけや発達理解、こども同士の関係性や育ち合い……。私たちは、身のまわりにある関係性を通して学びます。そこにある関係性を、私たちはこどもに合わせて考え、そして、こどもと共に創っていく。それは、私にとってとても大きな気づきであり、私の中の確信を深めることができました。生活と遊びの中にある教育的な価値を問う。それを、こどもから、こどもとと共に見つけようとすること。改めて、とても大切な気づきでした。



2023年の発見② よき生活者と庭師

振り返ってみると、乳幼児教育に関わり始めて15年が経ちます。私は大学を卒業してから、しばらくのあいだ、人間ではなく、動植物と向き合う農的な暮らしをしていました。数人の仲間と鶏豚や山羊と暮らす、有畜複合の循環型有機農業です。動植物を日々関わりながら、よく観察し、世話し育てるのは、学びの絶えない魅力的な仕事です。私は、そのとき動植物との関係性をお互いに心地よく快適なあり様を探りながら、多くのことを学びました。その時の経験のせいか、私の中には、自律的で自給的な人間像があると同時に、「よき生活者でありたい」という強い願いがあります。私はこの自分の中にある「生活者である」という意識を軸に乳幼児教育を見つづけています。



私にとって、乳幼児教育は、さまざまな専門領域が重なり合っており、実践経験と専門性の積み重ねによって、少しずつ全貌が読み解けてくるような専門職です。個々の育ちや発達や特性の理解、言葉や育ちの見通し、危機管理や日課、声がけや関わりの技術、保育者同士の連携や子育て支援、地域とのつながりや保護者対応と、人が育つことに関わる多岐にわたって専門性が求められます。ただ、そのひとつを取り出して、理解しようとすると、周辺がぼやっとしてしまう。不思議なことに、ひとつひとつを取り出して、バラバラに理解しようとすると繋がりが見えにくくなるのです。が、ある視点を持つと、すべてが繋がりあっていることに気が付きました。それを結び合わせているのが「生活」です。保育現場は、生活を共にする共同体。大人とこどもが生活を共にする共同体だからです。


私にとって、その共同体は、大人とこどもが育ちあう場所だけではなく、動植物も含めた共同体として見えています。生活をするとき、私たちは衣食住を動植物とのつながりの中で手にしているし、そのすべては結びついているからです。私は、その共同体がお互いに生活を営む空間を「庭」と呼んでいます。お互いが育ちあう空間です。その庭に生きる動植物が心地よく居られるように、心をくばり、労するのが庭師の仕事です。私には、よき生活者でありたいという願いに加えて、庭師への強い憧れもあるようです。今更ですが、自分の中にあるその願いを改めて自覚した2023年でした。


さて、私には何ができるのでしょう。見習い庭師の修行は続きます。自問自答の年明けです。 


2023年の発見③ こどもとの生活と自治


我が家には3人のこどもがいます。目の前のこどもたちは、考える間もないほどに、日々、絶え間なく成長し、日々、関わりを求めてきます。彼らは、正しく発達しようとか、効率的に覚えようとか、そういうことは考えません。目の前の現実と向き合いながら、懸命に自分を使い、日々生活しています。しかも、生きることに貪欲。自分が持っている力を使って、どんどん、自分ができることを増やしていき、ものすごいスピードで自律的であろうとする姿は目を見張るばかりです。私は、それに追いついていけません。時には、自律的であろうとする意欲を、彼らの渇望を理解せずに、抑え込んでしまう場合さえあります。


これから、環境破壊や食料問題は、ますます深刻に日常を脅かしていくことは間違いありません。一つの深刻な問題は、それに伴って多くの問題を引き起こすものです。格差、貧困、戦争、少子高齢化、経済の縮小、目まぐるしくしかも加速度的に緊急度の高い課題が降りかかってくるでしょう。この時代に、地球に生をうけて間もない小さな人たちが、これからを生き抜く力を育み、人格形成の基礎を培う乳幼児期に私たちにできることは? と、ついつい、小難しく考えてドツボにはまり込み気味ですが、先に書いた様に「生活」という視点で眺めると、この問題は私たちの手の取れる具体的な問題になります。


そして、問題がこどもたちと一緒に考えられる課題に変わっていきます。大人はついついこどもに何かを教えたくなるのですが、こどもたちは、今、目の前にある生活から全てを学びます。だから、大人だけで生活をするのではなくて、「こどもと生活」をすることがとても大切です。生活するということは、彼らに少しずつ自治権を委ねていくことでもあります。日々の繰り返し、ちいさな積み重ねの中で、こどもとの生活をつくっていく。私は、もっと彼らと生活がしたい。そして、こどもたちの姿を見ていて、彼らはすでに「よき生活者」の姿をしていることに、はたと気がついたのでした。そうなのです、私は彼らから見習わねばなりません。





ありがとう 2023年 

2024年よ、お手柔らかに!


私たちの周りには、いつもたくさんの学びと発見が満ちています。2023年は、講師の皆さまとの出会いと濃密な対話。お世話になってる園現場の皆さまからの刺激的な実践とレポート。自主勉強会や研修への参加と、振り返ってみると、多くの学びの機会をいただきました。ありがたいことです。


振り返ってみると、おかげさまで、収録と配信を終え、新刊を2冊出版することができ、毎月、庭しんぶんを発行し、絵本やおもちゃを保育現場に紹介することができました。


物事は、自分ひとりの力だけではどうにもならず、人の助けに頼らないと、乗り越えていけないことばかりです。ですから、お互いを搾取し合うのではなく、少しでも良い方向へ向かって、助け合える関係性を大切に育みながら、2024年も身を任せてみようと思っています。さて、どうなることやら…。


ただいま、これまで通り現場からの声を頼りに、実践的な内容で企画をつくっているところです。もう少しでまとまりそうですが、いまからでも、アンケートやご感想をいただけると幸いです。


これから始まる皆様の一年に、たくさんの良いことが訪れますように! 



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