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ありさんとありさんが〜♪

対象児:4歳児 男児O 時間:10分 場所:地域の公園 2022年6月2日記録


記録

 「園長こっちきて~。」と公園で遊んでいるとOが手を引っ張っていく。木が朽ちて倒れたところに来て、「見て見て!ありさ~~ん。」とOが言う。保育者が「どれどれ?」と穴を覗き込むと、大量のアリがそこにいる。「本当だ!すごいな~!」と感嘆の声をあげると、Oが「あ~りさんと、あ~りさんがこっつんこ♪」とたどたどしくも何回も歌い、満面の笑みでいる。Oと共にじっとアリの様子を見ている。Oが木によりかかるように覗いている。すると、アリがOの服の上でも歩いている。Oが「うわ~~!!」と言いながら、アリを手で払いのけている。保育者が「登ってきたね~!」と言うと、Oが「やめて~!」と言っている。2人でそのやり取りをしていると、その騒ぎを聞きつけた5歳児が複数名やってくる。

 Yが「うわ!すげえ!誰が見つけたの?」と聞くので、保育者が「Oだよ。よく見つけたよね。」と答える。Yも周りにいた年長も「O!すごいな~!こんなん見つけたんやな~!」と口々に話している。Oはじっとその様子を見ている。年長たちが、朽ちた木の穴に手を入れていく。すると、アリが年長たちの手を何匹もはっている。「うわー!見て!すっごいくっついたよ!!」と言いながら、それぞれに手にのったアリを見せてくる。Oも目を寄せてそれを見つめている。すると、Oが自分からも木の穴に手をいれる。そして、手を出すと、10匹以上のアリが手にくっついている。その手の上で動くアリをじっと見つめ、ニコッと笑い、再び「あ~りさんと、あ~りさんがこっつんこ♪」と歌いだす。すると、まわりの年長児も同じく歌を歌って、その場を去っていった。Oはしばらくそこに立ち止まり、公園の間そこのアリと遊んでいた。


省察

①基盤的環境:7つの文化財産「植物・動物」アリ

 地域環境の中の近所の公園での一幕である。虫好きのOが吸い寄せられるように朽ちた木のアリを発見した。アリは群れで生きるため、「たくさん」「並ぶ」「うじゃうじゃ」「童謡とのつながり」「不規則な動き」「動きのあるもの」「手のひらに乗る」「歩く感触」「どこでも見ることができる」など、子どもたちを魅了する要素が、その子その子に合ったものを持っている。今回Oを引き付けたのは、「量」と「感触」だろうと思われる。たくさんのアリのうじゃうじゃと保育者に伝えようとしたかったのだろう。そして、そこに普段のサークルタイムで聞いている歌が重なり合い、歌詞のファンタジーと現実の環境としての豊かさが重なり、Oの発見が他児を引き寄せ、つながりを作っている。


②遊びの種類:虫探し

 春の4月から5月にかけて、本格的に目覚めた生き物たちを子どもたちは非常に敏感に察知している。その虫探しが2カ月間続く中で、6月初旬に起きた出来事である。季節の移ろいの中での虫たちの暮らしを探すのが虫探しという行為であり、子どもたちを毎年引き付ける春と秋まで続いていく遊びである。


③誰が遊びのイメージをリードしたのか:4歳児O、5歳児複数名

 Oは加配児であり、虫に特段の興味を持つ子である。今回は保育者に自分の発見を伝え、自分の感動を歌にのせて伝えてくれた。しかし、思わぬハプニングで自分の身体についたアリと騒ぎを聞きつけた遊びへの参加者である5歳児が、Oに新たな楽しさをもたらせてくれた。保育者は共感的な存在としているだけであり、その場の流れを見届けることで、Oが持つ感覚や行動を最優先した。


④考察

 子どもたちが進めていく遊びの様子に感銘を受けた。保育者が介入するチャンスは山ほどあった。「童謡」を声高く歌うこと。アリを捕まえる。アリの巣作りの提案など、色々なことができただろう。しかし、それよりもまずはOが感じているアリの魅力やうれしさの表現の仕方を見て、それが邪推であり、自分ができることは事の成り行きを見ることであると思った。

 そこには嬉しいハプニングがあり、Oの身体を這うアリ、年長児の乱入とその行為を見て、Oは自分の世界を広げている。遊びとは、このように偶発的なものに引き寄せられることがある。そうすることで、その子の世界が豊かになり、その子自身の人とのかかわりが豊かになることがある。それは、その子自身がアリという環境と共に引き寄せたものであり、その子自身の体験となっていく。

 そこには、4月ー5月の間の虫などの小動物との関わりや、季節に見合った歌や絵本などの文化、保育室内での飼育環境、普段の園庭での虫探しの経験など、環境を保障してきたことも、今回の遊びを引き寄せた要因であることは間違いない。偶然を引き寄せるための環境的な計画や関わりがあることで、Oの虫への興味の向上などがあり、それを保育者は分かってくれているという信頼のもとに起きた遊びである。何よりもOが歌い始めた時に年長児が共に歌う姿に一体感を感じ、Oから出発した遊びとして嬉しい一幕であった。



ほかの事例
 
松本崇史(まつもとたかし)
鳴門教育大学で保育・絵本を学ぶ。絵本屋を経験し、その後、任天会の日野の森こども園にて園長を行い、ほとんど事務所におらず現場にいながら、こどもたちと遊びを謳歌している。現在、おおとりの森こども園園長。雑誌『げんき』にて「保育ってステキ」を連載中
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