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「うわぁ〜〜!!」


「うわぁ〜〜!!」

対象児:4歳児 男児H 2022年4月7日記録


記録

 前日に花柄を積んだビオラとパンジーを、テラスに置き、いつでも遊べるようにしておいた。また、色水遊び用のペットボトルや蓋なども並べていた。

 園庭の砂場の縁に、Hが座り込んでいる。保育者がのぞいてみるとHは、ペットボトルにビオラを浮かべ、その蓋にも水を入れて上から砂をまぶしていた。太陽の光が差し込み、木の縁には水や花びらの影ができている。「うわぁ~」と笑みを浮かべるHに、保育者は「きれいだね。影も面白い。」と声をかけ、ビオラの花を集めたボウルを運んできた。保育者はもう1度ペットボトルの蓋を見て、「小さい砂が浮いてきてるのも面白いね」と言う。しかしHは、それには「なんも浮いてないし」と返し、ボウルから花を取り出し蓋に乗せた。保育者は、「Hくん、蓋ならまだこれだけあるけど使う?」と、数十個の蓋が入った容器を取ってきた。「やったー。使う、使う」というHに、保育者は7,8個の蓋を取り出し、木の縁に置いた。Hはそれに水を注ぎ、砂をまぶし、花びらを乗せていく。その間に保育者は、また7、8個の蓋を、今度は直線状に並べてみた。するとHも、先程の蓋も同じように真っ直ぐ並べ直していく。

 「何してるん?Sもやりたい」と3歳児のSが来ると、Hは「いいよ」と、水や砂の入れ方、並べ方等を話しながらやって見せた。Sも見様見真似でやってみる。蓋を使い切る頃には、遊び始めて約30分が経とうとしていた。


考察

 春の自然を通して心を動かすHを見て、保育者は共感せずにはいられなかった。Hが心惹かれたものはなんだったのだろう。花柄の色、数、水に反射する太陽光、影、砂の粒子の何にどのように楽しさを見出したのだろうか。また、砂場の広い木の縁が太陽に温められ、その上に座るだけでも心地よく、暖かい居場所にすることで、より太陽光や花、水、砂を肌で感じ、自分だけの遊びを生み出したように思う。

 集団生活を初めて経験するHが、新園の新年度の保育2日目に見せた遊びである。遊びへの思いを十分に保障したいという思いとHが惹かれるものは何かを知るためにも、保育者は、①~⑤のように遊びの素材の提供やHの感性や心を探るような声をかけ、園を居心地良く感じられ、保育者に親しみが持てるように配慮した。


保育者のアプローチ

1) 遊びの素材の提供

2) 遊びへの気持ちを探る

「面白い」よりも「きれい」「美しい」ということに喜びを感じている。

※後に園長から「砂がキラキラして見えたんじゃない」と言われ、保育者がHと同じ方向ではなく、太陽に背を向けてその物を見ていたことを思い出す。Hは更に花びらを乗せることで、保育者に「きれいだよ」ということを伝えていたのかもしれない。保育者の立ち位置一つで、子ども理解が変わるということを痛感する。

3) 遊びへの思いを保障する

子どもが園内のことを十分把握できていない状況もあり、Hの遊びへの思いが十分満たされたのか確かめた。

4)

⑤のアプローチにより、Hが水や砂、ビオラを入れるだけでなく、並べる、浮かべる等より、自分なりの美しいものを追求して楽しんでいたと理解できる。



ほかの事例
 
森道子(もりみちこ)
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