top of page

出版記念研修会を開催! 『人形の服 ーお世話遊びを支える道具ー』

2024年1月12日に『人形の服 ーお世話遊びを支える道具ー』出版記念研修会が行われました!本書は、札幌を中心に、10年以上自主勉強会を続けてきた「子どもの生活と遊び研究会」の実践をまとめたものです。いくつかクラブ活動があるうちの一つ、「洋服クラブ」の実践です。



人形の服をきっかけにして、十何年と積み重ねられてきた子どもの遊びについての数々の気付きと発見をまとめました。それは、日々の生活の中に、人形がいることによって起こる出来事の記録と考察でもあります。当日は、「子どもの生活と遊び研究会」の皆さまを始め、道内から多くの皆さまにご参加いただきました。その様子をレポートします。




プログラム

1 講師藤田春義による講義「誰でも出来る人形遊びの援助の仕方と人形の服の使い方」40分程度

2 参加者同士の交流会

3 編集を担当した藤田進と、第2章を執筆された増山由香里氏による制作裏話


 

まずは、本研修を主催・企画した藤田春義が「誰でも出来る人形遊びの援助の仕方と人形の服の使い方」と題しお話ししました。【動画】でご覧ください。



次に、参加者の皆さまに小グループに分かれていただき交流会を行いました。各園より、実際に園で使用している人形たちを持参していただき、それぞれの園での実践などについてお話しされました。




最後に、本書の編集をした藤田進と、第2章で園の実践記録を執筆された増山由香里さんに、本書制作の裏話などについてお話しいただきました。文章でご覧ください。


 

増山由香里(以下 増):私はあんまり苦労はしていないんですよね。長い年月はかかってしまいましたが、その間に樋口さんが3章を書いてくださって、私が書いた2章は、本当に皆さんの人形遊びの実践を文章にするだけというありがたい作業だったので、苦労話はすべて進さんにお任せしたいと思います笑。


藤田進(以下 進):苦労話を皆さんが聞きたいかちょっと疑問なのですが(笑)、編集をするいうことは、「子どもの生活と遊び研究会」の皆さんの、十何年というこつこつとした日々の気づきや実践をたった112ページにまとめる、つまり「削る」という作業がほとんどなんです。


僕は皆さんの苦労したものをがりがりと削って、一冊の本にまとめさせていただきました。なので、ちょっとどきどきするというか……削りすぎてたらごめんなさい(笑)。足りていないところもあるかと思いながら、出してしまいました。それがすごく嫌だったから、出版まで5年もかかったんです(笑)。


洋服クラブの主催園である第2福ちゃん(社会福祉法人ろうふく会 札幌第2福ちゃん保育園)の皆さんには出す出す詐欺かと思われるくらい時間がかかってしまいましたが、いろいろ実践を集めて、生活と遊び研究会のほか園の皆さんにもアンケートを集めさせていただいて、それが数年経って、やっと本にまとまりました。


なので、皆さんが積み重ねてきたことがまとめられているんですけど、過去のことじゃなくて今現在も続いている実践が本になって、本をきっかけに、「そういえばこういうことしてきたよね」とか、途中で加わった方も「あ、だからこういうふうにやってたんだ」とか、あとは本に書き切れなかったことでも、「実際ここはどうなっているんだろう」とか、そういうことを話せるきっかけになるとすごくうれしいなと思っているところです。


4章立てになっていて、2章の実践編が増山さん、3章の理論編が樋口さんが執筆されています。増山さんがコロナ以前からいろんな園で集めてくださった実践をまとめてくださって、樋口さんはたぶんもっと書きたいことはあったとは思うんですけど、必要なことをコンパクトにまとめてくださっています。1章は皆さんのこつこつとした実践がまとまっていて、4章は皆さんのアンケートがまとめられています。増山さんと樋口さんには申し訳ないんだけど、1章と4章が特におもしろいです(笑)。1章と4章がこの本の価値かなと思っています。


増:2章の実践もおもしろいので……(笑)。


進:2章の実践、おもしろいですよ。おもしろいんですけど、欲張りを言うと、2章の実践の書き手が、当事者に書いていただくのがいいなと思うんですよ。皆さん忙しくて記録や言語化できないので、増山さんが行ってくださって、丁寧に残してくださっているんですけど……。


増:あの、おもしろい動画さえ皆さん撮っておいてくだされば……、


進:書きます?


増:書きます(笑)。


進:ふだん皆さんが関わっているこどもたちのすてきな、きらっとした一瞬があると思うんですよね。動画に残すのも大変ですけど、もし残していただければ、それを増山さんが?


増:文字に起こします。がんばります(笑)。


私はだいぶ前から人形遊びに注目して、かなりの動画の本数もありました。人形遊びだけに一生懸命注目して見た時に、一番自分が大事にしなきゃいけないなと思ったのは、やっぱり「じっくり見る」っていうことなんですよね。2章の中でも書いているんですけど、日常の中で、人形にいじわるしたりだとか、ネガティブなことを人形にしているように見えることって、けっこうあると思うんですよね。だけど、そこをあとちょっと、もう数分見てたら、っていうようなことがけっこうあって。「あ、いじわるしているように見えたけど、実はこの優しさを使うためのステップだったんだ」みたいなことがあるんですよね。


だから、私たち大人は「これちょっとやめてほしいな」ということにすぐ気がつくけど、特に保育者はそういう力に長けているのでね、でも「ここはちょっと堪えてみよう」っていう時間が非常に大事なんだなということに、皆さんの実践を見させていただいて感じています。毎日子どもと関わって忙しくしていると、なかなか立ち止まってその子をじっくり見るということって難しいんですが、こうやって少し離れて皆さんの姿を見ていると、こういうことが大事なんだなとようやく今気づけたという感じですね。なので皆さん、ちょっと心に留めておいていただけると、救われる子どももいるのかなって。


進:子育てしててもそうですけど、難しいですよね、ちょっとねばって見るって。


増:その子だけを見ているわけにはいかないのでね、保育は。簡単な言葉で言うと、広い視野を持って……(笑)。子どもを見る時に、「この先どうなるかな?」っていう期待感みたいなものが大事だと思っているので、「こんなことが生まれるんじゃないか」っていうふうに、まだ起こらないこれから先の遊びの展開を大人も想像しちゃうおもしろさみたいなことが、人形遊びに限らずですけどあるなぁと、皆さんの保育を見せていただく中で、学んだことです。


進:具材の本(シリーズ1作目『具材 ーごっこ遊びを支える道具ー』)もそうですけど、本を出したのが始まりかなと思っています。皆さんの実践が手に取れる形になって眺められるというのは、本のいいところです。……まぁ、何冊も買っていただきたいんですけど(笑)、買って、眺めながら、園の中で『人形の服』って名前でお世話遊びの本なんですけど、お世話遊びって本当に難しいなと思って。


この本は僕とデザインの青山くんと編集の葛原くんっていう、おじさん3人でつくったんですよ。おじさん3人で「何で人形遊びするんだろうね」とかっていうのを、保育を知らない2人に僕が説明しながらまとめていくっていう。難しいんですよ、皆さんがやっていることを知らないおじさんに説明するの(笑)。「何で服を脱がせたり着せたたりするの?」とか「これの何が大事なの?」とか「何で名前付けるの?」とか。人形を両手で持つとか、名前を付けて居場所をつくってあげるとか、一見仕事を増やしているように見えることをしてまで、お世話のことって価値があるっていうのが、この本に書いてあることなんで。


この本を土台に、皆さんがまた実践を積み上げていくきっかけになればうれしいです。今日は(会場に)生活と遊び研究会に所属していない方々も集まってくださっていますが、コロナもあって学びの方法もだいぶ変わり、僕たちも園で皆さんとゆっくり話すこともすごく少なくなってしまいました。ですが、今日のようにいろんな形でつながって交流しながら、いろいろな実践を記録したものを共有しながら、子どもの生活と遊びに必要なものを学び合うことができたらいいなと思っています。


増山さんが言う、願いや期待を持って子どもを見るって本当に大事なことだなぁと思うんですけどね。そのコツを知りたいですね。


増:コツ……はわからない(笑)ですが、この前、栄町マスカット保育園に伺った時に、1、2歳クラスで人形遊びをしていたんです。赤ちゃん人形が2人それぞれのベッドに寝ていて、その間に2歳の女の子が両手で寝かしつけながら、遠野のわらべうたの子守唄を一生懸命うたうんですよ。子どもがお人形にしていることを見ると、自分たち(大人)が子どもたちに大事にしていることっていうのがちゃんと表れるなぁと思いました。しかも、今度は友達も誘って一緒にうたい始めるんですよ。それが15分とか20分くらい、ひたすら「よいだらさ〜」ってうたい続けるという。その様子を見た時、本当に何ていうか、大人の気持ちがこんなふうに伝わるんだなとうれしくなりました。


進:2歳の娘が最近「やばっ」って言うんですよね(笑)。誰から聞いたのかわからないんですけどね。ちょっと反省もしながらおもしろいなって思って。園の集団の中だと、そういうことがもっといろいろ起こっていると思うので、やっぱりふだんの言葉がけとか絵本とか、そういういろんな基盤があって生活が成り立っているんだなと思います。そのうちの一つの「お世話をする」っていう要素だけでもこんなに広がりがあるんだなと改めて思いました。


「子どもの生活と遊び研究会」の説明をきちんとしていなかったのですが、クラブがいくつかあって、そのうちの「洋服クラブ」の活動を本にしました。洋服クラブでは、コロナ禍でできていなかったクラブ活動を再会しています。先日は冬のジャンバーをつくりました。みんなで集まって、ミシンや手縫いでつくって、持ち帰って、子どもたちにおろすということができるすてきなクラブ活動です。



クラブ活動を主宰されている第2福ちゃんの先生が(会場に)来てくださっているので、ご紹介してもいいですか? 先生が僕のいろいろな無茶ぶりに全部応えてくださって、文章やつくり方など引き受けてくださって、1章ができました。


札幌第2福ちゃん保育園 先生:5年くらい前にこの本を出版しようという話があって、進さんが保育園に来るたびに、いつ言われるのかなとどきどきしながら、もうそろそろないかなと思っていた頃に本格的に去年くらいから制作が始まって、急ピッチで型紙を集めて、つくり方も書いてみたけど、これがちゃんと伝わるのかっていうのがわからなくて……。文章も書いてはみたんですけど、進さんにだいぶ編集してもらって出来上がりました。本当に十何年前からやってきたことが少しずつ形になって、本にしていただいたのは、すごく感謝の気持ちでいっぱいなので、ぜひたくさんの方に見てもらいたいなと思います。ありがとうございます。

 

研修会のプログラムは以上で、最後に皆さんがそれぞれで交流したり、本や人形について楽しそうにお話しされ、和やかな雰囲気で研修会は終了しました。お越しいただいた皆さま、ありがとうございました!





bottom of page