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10分間という時間を私たちはどのように捉えているでしょう。状況によって「まだ10分ある」とも「もう10分しかない」とも捉えられます。時間の感覚は主観的です。では、こどもはどうでしょうか。3歳くらいになると、生活のさまざまな場面で見通しがつき始めます。外に行く支度をするのに、靴下を履いて、上着を着て、帽子をかぶり、靴を履いてと順序立てることができます。けれど、時間の見通しを立てているわけではありません。時間の見通しは、尿意を感じてから間に合うようにトイレに行って排尿するまでの時間、テーブルについてから「いただきます」をするまでの時間の間隔がわかるところから始まります。


大人は、9時までに登園するためには家を何時に出るという、生活の時間的な枠組みを持っているので「もう10分しかない」と思いますが、自分で時間の枠組みを持たないこどもは、靴下を履き始めてから玄関で靴を履くまで何分かかるかという見通しを持つ必要がないのです。小学生になっても、8時に玄関を出れば、ゆっくり歩いても8時半には学校に着くと思って送り出しても、「まだ学校に来ていません」と連絡が来たりします。途中の道草が計算に入っていません。ある時刻までにしなければならないと気付き、自分で時間の枠組みを考え始めなければ、急ぐということはしないでしょう。


私たち大人は、時計の針の速さに追いかけられる日々を過ごしています。親がこどもに発する言葉で一番多いのは「早く」で、一日に20回以上も言っているそうです。それよりも、「靴を履くのを見ているよ。履いたら手をつないで行こうね」と言った方が伝わります。時計のいらない世界を生きている幼い人たちのことを考えながら、休日を一緒に過ごしてみてください。ゆっくりとした流れにたくさんの発見があるはずです。


 

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。むかわ町にて保育の仕事を6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。北翔大学短期大学部非常勤講師。札幌国際大学非常勤講師。 ​
 
※この記事は庭しんぶん52号(2021年12月号)に掲載されたものです。
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