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Q. インターネットで何でも見られる今、どうやって不適切な情報からこどもを守ったらよいのでしょう?



A

不適切な情報からこどもを守ることはできないと考えたほうがよいと思います。情報化社会が行き過ぎていると感じているのは私だけではないでしょう。インターネットによるいじめで、大人もこどもも自ら命を断っています。よく考えないで発する言葉、状況が変化するスピードはすでに人間の限界を超えているのではないでしょうか。


さて、こどもにとって不適切な情報とはどのようなものでしょうか? 男女の身体の違いを意識するようになって、性に関する情報に触れることがその一つです。関心を持って理解するのは自然なことですが、強い刺激を求め繰り返し触れると依存につながるのではないか。また、格闘技などを見て強さに憧れを持ち、そのような場面を好んで見るということがあります。憧れを持つのは自然なことだと思いますが、暴力シーンを繰り返し見ることによってこどもの価値観を変えてしまうのではないか。行き過ぎた強い刺激のループから抜け出せなくなってしまったら、幸せな人間関係を築くことができなくなり、アルコール依存や薬物依存、過食やセックス依存、ギャンブルやゲームに溺れることになりはしないか? そのような恐れがあります。


精神科医で作家の岡田尊司さんの著書『死に至る病:あなたを蝕む愛着障害の脅威』(光文社)で、人を幸福にする3つの生物学的な仕組みを記しています。1つ目は食事やセックスなどの生理的な充足を得た時に放出されるエンドルフィンなどの脳内麻薬放出によって生じる快感。2つ目は困難な目的を達成した時に放出されるドーパミンという神経伝達物質の放出によって生じる快感。ただしドーパミンは、薬物やアルコールによって短絡的に得られるという特徴があります。3つ目は愛する人の顔を見たり触れたりした時の安らぎに満ちた喜び(愛着の仕組み)で、オキシトシンというホルモンによる快感。岡田さんは、人が困難に直面した時を次のように言っています。


「頑張っていた優等生やエリートが学業や仕事でつまずいたとき、家族の優しい慰めといたわりによって、立ち直ることができるのは、ドーパミン系の報酬を得ることに失敗しても、オキシトシン系が与えてくれる慰めや喜びによって、それを埋め合わせることができるからだ。ところが、愛着の仕組みもうまく機能していないと、どうなるか。(中略)食べることや性欲を満たすことで紛らわすか、短絡的にドーパミンの放出を生じさせる物質や行為にのめり込み、代償的な満足を得るかしかない」(2019, p.100-101)。


さて、はるよしさんの答えは、「インターネット社会でこどもを守る最も確実な方法は、愛着の仕組みを築くこと」です。愛着は特定の養育者との結びつき、語り合うこと、触れ合うこと、喜びを分かち合うことによって築かれます。そのためにはこどもをよく見て、話をよく聞く機会を頻繁に計画的に持ちましょう。


 

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。むかわ町にて保育の仕事を6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。北翔大学短期大学部非常勤講師。札幌国際大学非常勤講師。 ​
 
※この記事は庭しんぶん50号(2021年10月号)に掲載されたものです。
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