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Q. はるよしさんにとって友達はどんな存在ですか?



A

サン=テグジュペリの『星の王子さま』の一節からヒントをもらいます。


「(前略)あんたの目からすると、おれは、十万ものキツネとおんなじなんだ。だけど、あんたが、おれを飼いならすと、おれたちは、もう、おたがいに、はなれちゃいられなくなるよ。あんたは、おれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、おれは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ……」とキツネがいいました。(中略)「でも、どうしたらいいの?」と、王子さまがいいました。キツネが答えました。「しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目でみる。あんたは、なんにもいわない。それも、ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへきて、すわれるようになるんだ……」あくる日、王子さまは、またやってきました。すると、キツネがいいました。「いつも同じ時刻にやってくるほうがいいんだ。あんたが午後四時にやってくるとすると、おれ、三時には、もう、うれしくなりだすというものだ。そして、時刻がたつにつれて、おれはうれしくなるだろう。四時には、もう、おちおちしていられなくなって、おれは、幸福のありがたさを身にしみて思う。だけど、もし、あんたがいつでもかまわずやってくるんだと、いつ、あんたを待つ気もちになっていいのか、てんでわかりっこないからなあ……きまりがいるんだよ」


この部分がすごく好きです。いろいろな友達がいます。手紙でのお付き合いの人、メールでの人、年に何回かの電話での人、もちろん実際に会える人。ぼくは49年前の手紙を今でも大切にしています。高校を卒業したあと、新聞配達をしながら東京で土木工学を学んでいた友達です。冒頭に「手紙ありがとう。本当に俺のこと心配してくれてうれしいよ」とあり、続いて仕事のおもしろさと辛さ、都会になじめない気持ち、弱音を吐きつつ、俺だけが苦しいんじゃないと自分に言い聞かせている文面を読み、彼のことを誇らしく思って、自分の支えにしていました。どの友達も「あんたは、おれにとって、この世でたった一人の人になるし、おれは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ……」と思える人です。


※『愛蔵版 星の王子さま』サン=テグジュペリ 作 / 内藤濯 訳 / 岩波書店


 

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。むかわ町にて保育の仕事を6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。北翔大学短期大学部非常勤講師。札幌国際大学非常勤講師。 ​
 
※この記事は庭しんぶん45号(2021年5月号)に掲載されたものです。
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