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まずは目の高さを合わせるために、しゃがんだり座ったりしてから「おはよう」「こんにちは」と穏やかな声であいさつします。次に手に持っているものや身に付けているものに興味を示して「これ、お気に入りなんだね」とか、「これはイチゴ、これは赤いお花だね」などと声をかけます。それだけで、こどもとの気持ちの距離がぐんと縮まります。
わが家の三男は石が大好きでした。石好きに年齢の壁はないらしく、5歳くらいのとき、仕事で伺ったお家の庭先で、三男が興味深そうに石を見ていると、ご主人が「これは○○という石で……」と話し始めました。彼が真剣に聞くものですから、話は庭先で留まらずお家の中までお邪魔したことがありました。こどもと大人に関わらず、同じものに関心を持つことは急速に親密になるカギです。
ただし、初対面で緊張してこどもが目を反らしたら、静かにあいさつしてから、「またね」と緊張を強いる時間をできるだけ短くし、その子のお父さんやお母さんと笑顔でお話しします。その様子を見て「お父さん、お母さんと仲よしの人だ」と認識してくれたら、次に会うときには安心感を持ってもらえるでしょう。
こどもから話しかけてくれたら、発せられた言葉をそのまま返します。こどもが新しい靴を履いていて「これ、くつ」と言ったら、「これ、くつね」と返します。同じ言葉を使うことで会話が生まれ、つながりができるのです。次に「あなたのくつ、赤くてすてき」と、少しだけその特徴に触れます。するとこどもは自分の靴について言ってもらえたことを喜びます。
目の高さを合わせることで、こどもは関係が平等であることを感じます。また、持ち物や身に付けているものに関心を寄せることで、自分自身に関心を持っていると感じ取ります。そして、言葉を交わしたことが喜びとなって記憶に残ります。石好きのご主人が私抜きで三男と話していたとき、そこには対等で親密な人間関係がありました。幼い人をひとりの人として語りかけることを意識しています。
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