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Q. 専業主婦。4歳と0歳の娘がいます。仕事であまり家にいないお父さんばかり求める長女に「お母さんいらない」と毎日のように言われます。



A

まず、「お母さんはいらない」と言う4歳の娘さんの言葉に注意を向けてみましょう。相談者はその言葉に自分の存在を否定されて悲嘆にくれているのがよくわかります。しかし、娘さんはお母さんの存在を否定しているのではないと思います。4歳のこどもは「かくかくしかじかの状況で私は困っているのです。それでこんな気持ちになっているので、そんなことはしないでください、言わないでください」とは言えないのです。娘さんが「お母さんはいらない」と言う場面を巻き戻すようにして注意深く思い出してみてください。きっと、お母さんが娘さんに何かをしている時、あるいは言っている時ではないでしょうか。そのことに対して「イヤ」と言う意思表示として使っているような気がします。


次に、相談者を中心とした家族のありように注意を向けます。0歳の妹さんのお世話は24時間気が抜けません。4歳の娘さんはある程度自分のことはできるようになってきたので、できないところを励ましている。そして仕事であまり家にいないお父さんの分までお母さんが頑張っているのではないでしょうか? あれもこれもという気持ちの中で、4歳の娘さんに対してよかれと思ってしていることや言っていることが、娘さんにとってはイヤなこと、言ってほしくない言葉になっていないでしょうか? もしそうだとしたら、そのことを娘さんとお話しして、イヤだったことや言葉について謝り、そんな時にしてほしいこと、言ってほしい言葉を聞いてみます。こうして娘さんと新たな関係を築きます。


そして、0歳の妹の出現に4歳の娘さんがどんな気持ちを抱いているかに注意を向けましょう。妹が現れる前はすべての注目が自分に向いていました。現れたあとは注目の大半が妹に移っている現実を感じています。「お母さんはいらない」の言葉の底には、寂しさと、それでも頑張るという意思と、お母さんの気持ちを自分に向かせようとする思いが、無意識のうちに働いているように思います。絵本『ちょっとだけ』(福音館書店)の主人公のなっちゃんと同じ状況なので、ぜひ一緒に読んでみてください。さて、最後にお父さんのことに触れましょう。ふだんあまり家にいないので、こどもと関わるのはお父さんの喜びですね。だから娘さんにとっても喜びの時間です。「お父さんばかり」という気持ちではなく、「帰ってきてよかったね、うれしいね」と本気で喜び合いましょう。



 

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。むかわ町にて保育の仕事を6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。北翔大学短期大学部非常勤講師。札幌国際大学非常勤講師。 ​
 
※この記事は庭しんぶん64号(2022年12月号)に掲載されたものです。

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