2021年に行われた増山由香里氏の講座「乳児から幼児の食事を一から考える」を基盤に、こどもの食事について考えていきます。講座第1回目の副題として増山氏は、「食事は良い関係の中で進められる」としました。増山氏が、何園もの園での食事の様子や、大人とこどもの関わりを見てきた中で感じたことや気付いたこと、大事にしたいことをお話しいただきました。
食事の基本
①楽しく食べる
②食べる主体としてのこどもを尊重する
①これは食事に限ったことではないのですが、こどもは、いや大人も、「楽しい」「うれしい」といった喜びの気持ちがあるからこそ、何度でも同じ行為をします。そしてこどもは、同じ行為を繰り返すことで、身につけていきます。食事の時間がその子にとって喜びの時間であれば、何度でも繰り返したくなるでしょう。食事は「食べることが楽しい、うれしい」と思えば思うほど、自立に向かっていくと考えます。
②「主体」とはこども自身。こどもが思っていることや考えていることを尊重して食事を進めることで、こどもと保育者の関係性が築かれます。そして関係が築かれることで食事の時間がさらに関係を築く時間となるのです。
では、①と②を実現するために、保育者が意識するべきこととは何でしょうか?
それは、「食べる意欲を削がないような関わりをしていく」ことです。「食事」というと、体の栄養にフォーカスが当たることが多いと思いますが、この連載では食事を通し心の栄養を育み、取り込んでいくということに着目していきます。
最初に、根岸宏邦氏による書籍『子どもの食事 ー何を食べるか、どう食べるかー』(中央公論新書)に記されている言葉をご紹介します。
『子どもにとって食事は単なる栄養素の補給という意味を持つだけではありません。(中略)その場その場でどのような食生活をしたかということは、深く心に焼き付けられます。そして、それは成長し大人になってからの人格形成に大きな影響を及ぼしてくるのです。どのような食品を食べたかということではなく、「どのような状況を」食べたかということの方が、大きな意味を持ってくる場合が多いように思います。』(p.1-2)
この、『「どのような状況」を食べたのか』という一文は、まさに、食事を通して心の栄養をつくるということだと思うのです。もしも、食事の思い出が苦しいものしかなければ、食べることに関心を持ちにくく、食に対して意欲を持ちにくいと思います。そして、食事の中で築かれる大人との関係性は、こどもの生きていく土台にもなっていくのです。
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