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Q. こどもはほしいですが私に育てられるか不安です。春義さんにも不安はあったのでしょうか?



A

なぜか私たちは自分が赤ちゃんだった時代のことを忘れて大人になってしまいます。赤ちゃんの時の気持ち、言いたいこと、してほしくないことを覚えていればそれが役に立つのではないかと思うのです。でもそうではないから、なぜ泣いているのだろう? お腹が減っているのかな? おむつが汚れているのかな? どこか痛いのかな? 一体今何を感じているのだろう? 笑っているので機嫌がいい。なかなか応じてくれないのでイヤなんだ。というように推測しながら付き合っていくのだと思います。目の前の赤ちゃんのことを知ることなしに育てられないわけです。


だから僕も不安でした。誰しも初めてのことには不安を抱くものです。けれど人によって、不安の種類も強さも対応するやり方も違います。僕は長男が生まれる時に、無事に生まれるかどうかを心配していました。無事に生まれて本当に安心しました。そこから始まりましたから、毎日生きていてくれることがうれしかったです。はじめのうちはおっぱいを飲ませること、おむつを替えること、お風呂に入れること、寝かせること、機嫌のいい時にあやすこと、そういうことの繰り返しです。僕にできたのはお風呂くらいでした。時間をかけて成長しますから、少しずつやり方を考え、覚えればいいです。


僕は先輩に松田道雄の『育児の百科』(岩波書店)をすすめられ、毎日こどもの現在と同じ項を読んで、少しずつわが子のことを理解しました。不安が漠然としたものならば、「春義さんも不安だったのだから、私が不安になっても当たり前。春義さんと同じことをやってみよう」と吹っ切れるかもしれません。


しかし今一度、不安の根を探ってみましょう。こどものことがよくわからないから? 必要な時の助けはどこにあるかわからないから? 仕事や家庭生活のやり方が変わってしまうから? それがわかれば対策は可能です。考えていくといろいろな葛藤が出てくるかもしれません。その時には、赤ちゃんが機嫌よく健やかに過ごせることを第一に考えると、大抵上手くいきます。親も友達も助けになりますし、いろいろな社会資源も使えます。必ず乗り越えられます。


※『育児の百科』のほか、福音館書店の佐々木正美著『子どもへのまなざし』はこどもに対する心のあり方を、山田真著『はじめてであう 小児科の本』は最新情報でこどもの病気との付き合い方を教えてくれました。


 

藤田春義(ふじたはるよし)
1954年秋田県生まれ。むかわ町にて保育の仕事を6年余り経験し、その後、札幌第一こどものとも社に勤務。1996年に絵本とおもちゃの専門店「ろばのこ」を立ち上げ、育児教室を開催してきた。北翔大学短期大学部非常勤講師。札幌国際大学非常勤講師。 ​
 
※この記事は庭しんぶん35号(2020年7月号)に掲載されたものです。

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